「店舗の建築費用ってどれくらい?」
「建築費が変わる要素はなに?」
「店舗建築費を安くする方法は?」
新築の店舗を建築する場合、どれくらいの費用になるのか気になる方も多いでしょう。
店舗建築費は、施工会社によって異なるのは当然ながら、建物の構造によって大きく変動します。
また構造だけでなく、建物の広さや土地の形状などによって、数百万円から数千万円ほど差額が生じるため、費用が変わる要素を理解しておいた方が良いでしょう。
この記事では、構造別の店舗建築費の目安と内訳、費用が左右される要素について解説します。
重ねて店舗建築費を安くするコツを3つ紹介します。
構造別店舗建築費の目安と特徴
構造別、店舗建築費の目安は以下の表の通りです。
構造 | 坪単価 |
---|---|
鉄筋コンクリート造 | 約120万円 |
鉄骨鉄筋コンクリート造 | 約140万円 |
鉄骨造 | 約75万円 |
木造 | 約60万円 |
坪単価とは、建物一坪を建築するための費用を指します。
仮に延べ床面積50坪の木造店舗を建築する場合、「60万円×50万円=3,000万円」が本体工事費用目安となるということです。
店舗を建築するためには、本体工事費用に加え、外構工事費用や諸費用などがかかります。
おおよそ、総工費のうち、「本体工事費用が60%〜70%」「その他の費用が30%〜40%」となるケースが多いです。(土地代は含みません)
総工費 | 100% | |
---|---|---|
店舗建築費 | 60%〜70% | |
その他の費用 | 外構費用 | 30%〜40% |
設備費用 | ||
諸費用 |
つまり、本体価格が3,000万円の場合、総工費はおおよそ5,000万円ほどになると想定できます。
もちろん物件によって異なるため、一概には言えないものの、坪単価で算出する費用だけが建築費ではない点に注意しましょう。
また坪単価だけで構造を選ぶのではなく、それぞれの特徴を理解しておくことが大切です。
ここでは、構造別の特徴について紹介します。
鉄筋コンクリート造
鉄筋コンクリート造は「RC造」とも呼ばれている構造です。
柱や梁、壁などといった主要構造部に鉄筋を入れたコンクリートの構造物です。
コンクリートは圧縮に強く、引張に弱いため、曲げる力を加えるとすぐに折れてしまいます。
その弱みを解消するため、引張に強い鉄筋を入れ、両者の弱点を補うようにしている構造です。
RC造は、耐火性、耐震性、気密性、防音性が高いという特徴があります。
一方で、RC造は熱伝導率が低いため、冬場は寒くなりやすいです。
そのため、冬場の光熱費には注意しなければいけない構造です。
しかし、スタイリッシュでシンプルなデザインから、見栄えが良く、現代では人気のある構造の一つです。
鉄骨鉄筋コンクリート造
鉄骨鉄筋コンクリート造は「SRC造」とも呼ばれており、鉄骨で支柱を組んだところに鉄筋で枠を設け、そこにコンクリートを流し込んで施工する構造です。
特に高層マンションや高層ビルに用いられる構造であり、4つの中で最もコストが高いです。
ただし、全階層SRC造にしてしまうと、建物が重くなり、高層階が不安定になるため、低層部分に用いられることが一般的です。
場合によっては、RC造よりコストが安くなるケースもあります。
とはいえ、一般的に店舗に用いられる構造ではありません。
SRC造は、コストはもちろん、高層階の建物を建築する際に使用する構造であるためです。
RC造より耐震性、耐久性に優れ、構造の中でも最も耐火性が高いため、SRC造で建築する場合、飲食店など火を扱う店舗に向いているでしょう。
鉄骨造
鉄骨造(S造)は、鉄骨材をベースに使用した構造で、「重量鉄骨造」と「軽量鉄骨造」の2種類あります。
重量鉄骨造とは、厚さ6mm以上の鋼材を使用したものです。一方軽量鉄骨造は、厚さ6mm未満の鋼材を使用した構造を指します。
当然ながら、重量鉄骨造の建物の方が耐震性や耐久性に優れておりますが、コストが高いというデメリットがあります。
そのため、店舗には比較的コストが安い軽量鉄骨造が用いられることが多く、場合によっては木造より単価が安くなるケースもあります。
しかし、どちらも通気性・断熱性が低いというデメリットを持ち合わせているため、換気性能を考慮した間取りにする必要があります。
木造
日本で最もポピュラーな木造には、「在来工法」と「2×4工法」の2種類があります。
在来工法は、柱と梁によって建物を支える構造であるのに対し、2×4工法は、四方の壁4枚と天井と床、合わせて6枚で空間を構成する構造体をつくる工法です。
在来工法は間取りの自由度が高いという特徴があるのに対し、2×4工法は、耐火性・耐震性に優れているという特徴があります。
ただし、どちらも空間を大きく開放的にできないため、店舗の種類によっては適さないこともあります。
店舗にかかるその他の費用
先程もお伝えしましたが、店舗建築にかかる費用は、本体工事費用だけではありません。
トータルどれくらいの費用がかかるのかを把握するためには、その他に内訳についても理解しておくことが大切です。
ここでは4つの費用を紹介するので、ひとつずつ確認しておきましょう。
外構費用
外構費用とは、建物外周工事の費用です。主に、敷地の舗装や隣地との境界、駐車場などの施工費用が該当します。
外構工事は、施工範囲によって費用は大きく異なり、狭くなるほど安くなるのが一般的です。
しかし、隣地と高低差があったり、既存擁壁が劣化していたりすると、擁壁工事として多額の費用がかかり、1,000万円を超えるケースも珍しくありません。
工事内容によって費用も大きく異なるため注意が必要です。
敷地の舗装に関しては、一般的に「砂利」「アスファルト舗装」「土間コンクリート」から選択するのが多いです。
砂利と土間コンクリートでは、費用が数倍以上異なるため、施工方法も慎重に選ぶ必要があるでしょう。
外構工事の工事費用 | ||||
---|---|---|---|---|
砂利 | < | アスファルト舗装 | < | 土間コンクリート |
また、おしゃれな庭にするとなると、照明や装飾など、さらにコストがかかることもあるため、店舗建築する際は、外構費用もしっかり確認することが大切です。
設備費用
設備費用は電気工事、水道工事、ガス工事、給排気工事、空調設備工事などが主な工事内容です。
これらの工事は店舗だけに限らず、住宅やオフィスなどにもかかる費用です。
店舗の業態によってさらに追加でかかる設備費用もあるため、しっかり確認しておきましょう。
飲食店であれば、業務用の冷蔵庫、アパレル店舗であれば洋服をかけるテルソーやラックなども、店舗の業種に必要な設備も含まれます。
諸費用
店舗を建築する際は、さまざまな諸費用がかかります。
主な諸費用:
・地盤改良費
・各種申請費用(建築確認申請・完了検査など)
・水道加入金
・期中利息
・登記費用
・融資関連費用
・解体費用(建物がある場合)
・不動産取得税 など
諸費用は建築する物件によって大きく異なり、数百万円程度で済むケースもあれば、数千万円になるケースもあります。
土地代金
土地を購入して店舗を建築する際、土地代金がかかります。
土地によって金額が異なるうえ、土地購入に付随する諸費用がかかります。
土地購入に関わる諸費用:
・仲介手数料
・所有権移転登記費用
・印紙代 など
仲介手数料は「土地代金×3%+ 6万円」に消費税を掛けた金額です。
所有権移転登記費用は、「10万円〜100万円前後」、印紙代は「1万円〜10万円」程度です。
もちろん、土地によって費用は異なりますが、おおよそ土地代金の4%〜5%程度の金額が諸費用となります。
土地代金が大きくなるほど、比例して諸費用も高額となるため、しっかり確認しておくべきポイントの一つです。
店舗建築の費用を大きく左右する要素
店舗建築費用はさまざまな要因によって変動します。
ここでは店舗建築の費用を大きく左右する要素を3つ紹介するため、ひとつずつ確認しておきましょう。
建物の構造と広さ
建物の構造と広さは、店舗建築の費用を大きく左右する要素の一つです。
先程もお伝えした通り、構造によって坪単価は2倍近く異なります。
また、建物も大きくなるほど建築費用も増えることになります。
コストを優先するのであれば、木造がおすすめですが、開放的な間取りにする必要がある方は、鉄骨造で建築するとよいでしょう。
RC造やSRC造は、コストが高すぎるがゆえにおすすめできません。
もちろん、スタイリッシュな見栄えにしたいという方もいらっしゃるかと思いますが、鉄骨造や木造でも、コンクリートのような壁紙や外壁を採用することで、同等のデザインにすることも可能です。
店舗の建築費用が高額になると、借入するローンも高額となり、返済に追われる可能性も高いため、しっかりバランスを考慮して構造と広さ決めることが大切です。
土地の広さと立地
建築する土地の広さと立地も、店舗建築費用に大きく影響がでます。
主な例を挙げると以下のような要素が挙げられます。
・土地が広くなると、外構工事する範囲が増える
・前面道路が狭いと工事車両が入っていけず、手組での工事になることからコスト高にもなる
・高低差がある立地の土地などは、給水するのにポンプを設置しなければいけない
・崖の土地などは擁壁工事などが必要となる
上記の他にも、土地によって総工費が大きく影響される要因はたくさんあります。
建築会社に土地を見てもらい、通常より高くなるのかチェックしてもらいましょう。
設備のグレード
導入する設備のグレードによっても費用は大きく異なってきます。
例えば、高級な照明を使用したり、ハイグレードなトイレを取り入れたりすると、それだけで数十万円や数百万円の違いが生まれます。
設備はグレードが高くなるほど、見栄えや使い勝手がよくなる傾向にありますが、その分高額になるため、店舗の業態やコンセプトにあった設備を選ぶことが大切です。
店舗建築費を安くするコツ
店舗建築費は、数千万円から億を超える金額になるケースも多いです。
開業前の大きな出費となることから、少しでも費用を抑えたいと考える方もいらっしゃることでしょう。
ここでは店舗建築費を安くするコツを紹介します。
構造を簡易的なものにする
建物の構造と間取りを簡易的なものにすれば、店舗建築費を抑えられます。
カラオケボックスなどのように、個室を複数に分ける間取りより、アパレル店舗のように、区切りがない間取りの方が、工事も簡易的で材料も少なくなるため、コストが安くなります。
構造で比べてみると木造が最も安いですが、店舗を開放的でシンプルな間取りにするのであれば、鉄骨造の方が安いというケースも少なくありません。
店舗の業態やコンセプトによって構造や間取りは変わりますが、簡易的なものを選ぶようにすると、コストも抑えることができます。
複数社に相見積もりを取る
店舗の建築費用は、業者によって大きく異なるため、複数社に見積もりを取るようにしましょう。
ベースとなる工事内容を1社と打合せし、その後見積内容を他社に伝えることで簡単に見積もりを取ることができます。
各社見積内容に違いがあると、どこが安いのか判断できません。そのため、同条件で見積もりを取ることをおすすめします。
ただし、見積もりを多くとると、その分各社との打ち合わせ回数も増え、全ての見積もりが届くまで時間がかかり、工事着手が遅れてしまいます。
2社3社の見積もりを取れば、おおよその相場を把握できるため、依頼し過ぎには注意が必要です。
リース品の設備を使う
店舗の業種に合わせた設備などをリース品にすれば、店舗建築費を安く抑えることができます。
リース品は、契約期間中、料金を支払い続ければ使うことができ、店舗建築の初期費用の節約につながるメリットがあります。
特に飲食店などは、導入する設備も多いうえ、一つ一つが高額です。
そのため、リース品を使って営業されている方も多いです。
リース会社の方へ問い合わせし、購入する場合と比較してどちらがお得になるのかを確認してみましょう。
店舗建築費のまとめ
店舗建築費は、建物の構造や立地などによって費用は大きく異なります。
最も安くしたい方は、木造がおすすめですが、間取りの自由度の高さを優先される方は鉄骨造が良いでしょう。
店舗建築費が高いと感じる人は、1社の見積もりだけで決めるのではなく、2社3社相見積もりを取りましょう。
また、構造を簡易的にしたり、リース品などを使うことで、費用を抑えることにもつながります。